Les Rêveries du promeneur solitaire

やる気less

やる気が感じられない。もっとまじめにプロモートしなさい!

 演奏させてもらえず、自分の楽器も持ち込めず、クチパク演技を強要されたというところか?けれども、そのくらいでこんなにグレるものだろうか?たしかに、このバンドは人前で曲芸を披露してナンボという大道芸人的な要素が大きい。それは、ニューウェーブ風であっても、そうなりきれない理由、でもあるのだろうけど。

しかし、フリップ御大、やる気がなさそうなフリを見せながらも、なにげにソロの部分の演技はまじめである。御大はなかなかの演技派だったのかもしれない。近頃、リタイヤして肩の荷が降りたのか、すっかりゆるキャラ化、ファンに溜息をつかせいている模様。でも、このギターソロ、テープ逆再生音なのだが(笑)。一応、トレードマークの黒いレスポールも用意してもらったし?

ちなみに、この頃は少なくともライブではあまり黒いレスポールは使っていなかったように思う。映像でよく見られるのは、初のポリフォニック・ギターシンセサイザー、ローランドのGR-300(エレキギター型コントローラーは富士ローランドのG-303)。エイドリアン・ブリューも使うことがあった。

 

 個人的な印象になるけれど、そもそもこのHeartbeatという曲自体、シングルカット用に無理に作らされたように感じる。やる気が感じられない、そんな気にさせる理由は2つ。

一つは、最新鋭のギターシンセを使うことをセールスポイントにしているのに、なぜいまさら大昔に流行したテープ逆再生サウンドなんて使ったのだろうか?という点。80年代のクリムゾンはナツメロ・バンドではない。ファンからさんざん期待された21st Century Schizoid Manの演奏も完全に封印した。ニューウェーブにはなりきれなかったとしても、やりたいことはわりとハッキリしていた、と思う。

もう一つの理由は、この曲からハイハットの音が聴こえること。この時期のビル・ブラッフォードのドラムセットにはハイハットがなかった。シモンズのエレクトリック・ドラムとアコースティック・ドラムを併用するのに加えてハイハットを使わないのもこのバンドのコンセプトだったはず。

 

一方、エイドリアン・ブリューは個人的にこの曲が気に入っていたのか、それともクリムゾンでの出来栄えによほど不満を持っていたのか、1990年のソロアルバムでこの曲をやり直している。このアルバムはデビッド・ボウイをゲストに迎えるなど、強いやる気が感じられる。この年、ボウイのツアーにも帯同した。ダイキンのCMで十八番の動物の鳴きマネを披露していたのも、たしかこのころだと思う。

当時のテレビ出演の映像。

 このYouTubeのコメント欄でドラムがトニー・レヴィンだ!という反応がある。側頭部を見る限り完全体のトニーではない。

そんなことはどうでもよろしい。この演奏のギターソロパートの出だしでは、逆再生音の代わりに、エフェクターのリバース・ディレイを使った演奏を披露している。この技はエイドリアン・ブリューの得意技の一つとしてギターマニアの間で話題になった、とされる。どの程度話題になったのか自分は知らないけれど、このころブリューが多用していたのは事実。あいにくこの曲ではあまりフィットしている感じがしない。90年代クリムゾンのこの曲では結構イケている感じがする。

 

 

ああ、余談だけど、ダイキンのCM、ギター版江戸家猫八は以下。

http://www.youtube.com/watch?v=RD09qQjHXsw

http://www.youtube.com/watch?v=0e7sVgSZWP0