Les Rêveries du promeneur solitaire

What's The Gorilla?

昨日の記事で話題にしたデビッド・ボウイの1978年のNHKホールでの公演ではゴリラがドラムを叩いている。

ほれ↓

ゴリラと言うよりも猿の惑星みたいに見えるかもだけれど、これは確実にゴリラとしかいいようがない。このゴリラは、デビッド・ボウイ・バンドの正規のメンバーではなかったはず。正規のドラマーは別にいた。臨時の非正規雇用だろう。

このゴリラの当時の主な本業はジェネシスのツアーメンバーで、ドラム兼ボーカルのフィル・コリンズのサポートをする仕事だった。

ゴリラの名前はチェスター・トンプソン。彼がなぜゴリラなのかは、ザッパのバンドに参加していた時のこと。1975年発表のアルバム、One Size Fits Allの収録曲、Florentine Pogenの最後で、Chester's go-rillaと繰り返す歌詞があることから始まっている。

Florentine Pogen Lyrics - Frank Zappa
http://www.lyricsfreak.com/f/frank+zappa/florentine+pogen_20056783.html

当時の映像。

4:50頃に注目。


英語の"gorilla"は「醜い粗暴な人」という意味合いでも使われることがあるようで、ここではチェスター・トンプソンが出くわした特段に酷い熱狂的な女性ファン(groupie)のことを指しているらしい。あとは彼がゴリラに似ているとか、英国にChester Zooという有名な動物園があることも関係あるのかなあ?とにかくそんなわけで、ザッパのバンドで彼はゴリラというアダ名がつけられたらしい。

チェスター・トンプソンは1976年にザッパのバンドを離れ、短い期間ウェザー・リポートに参加した後、1977年にジェネシスのツアーメンバーになる。その前の年の1976にジェネシスが発表したアルバム、Wind & Wutheringには、Wot Gorilla?というインスト曲があって、これはチェスター・トンプソンのことを指しているという説があるみたい。

NHKホールのボウイのライブで、ゴリラのドラマーを見た人の中にこのネタをその場で理解した人はどれほどいたのだろうか?それから、この時にザッパ・バンドの出身者が2人いたということも。相当な"gorilla"(熱狂的なファン)向けのネタだと思うのだけれど。

おまけ

今回ご紹介した、ザッパのビデオは今月に再発され、下旬には日本版も発売が予定されている。この時のメンバーはファンから「最強」とか言われたりすることがある。

ア・トークン・オブ・ヒズ・エクストリーム [DVD]

ア・トークン・オブ・ヒズ・エクストリーム [DVD]


自分のようにプログレ経由でザッパに入門するのはよくあるパターンみたいだけれど、そういう人にとってOne Size Fits Allは最適の入門版かもしれない。

One Size Fits All

One Size Fits All


自分はピーター・ガブリエルが脱退した後のジェネシスはまともに聴いたことがないけれど、たぶんこのころのフィル・コリンズは相当たいへんだったろうなあと想像する。カリスマが去り、その後釜として、それまで裏方だった彼が急遽フロントマンになった。たとえ新しいメンバーをボーカルに加えたとしてもきっとファンは認めなかっただろう。加えて同時にプログレが急速に時代遅れの音楽になっていった時期に重なっている。まさしく泣きっ面に蜂。このアルバムではまだプログレっぽい曲をやっている。このアルバムを最後にギタリストも脱退して3人編成になる。フィル・コリンズはジャズ・ロック・バンドも掛け持ちしていたけれど、ひょっとして保険を掛けていたのだろうか?

Wind & Wuthering

Wind & Wuthering