Les Rêveries du promeneur solitaire

朝、歌を歌って

昨日はややめんどうくさい話になったのでちょっと一息。まず、昨年亡くなったケビン・エアーズの曲から。

朝にある歌を歌って、
夜にまた歌って
自分がなんて歌っているのかすら
さっぱり分からないんだけど
自分は大丈夫なんだって思えるような気分にさせてくれるんだ

こんな意味合いの短い歌詞の繰り返し。
日立の「この木なんの木」にちょっと雰囲気が似てるかなあ。
小林亜星はけっこうプログレも聴いてたみたいだからな。
ギターはカリスマ、シド・バレットが弾いているとされている。
ちょっと変わったおちゃめなギターの音。

少年時代、1980年代の半ば頃、ある音楽雑誌でシド・バレットは「廃人になった」というのを読んで、なんだかすごくワクワクしたような気がする。その音楽雑誌というのは、FM fanの1984年4月23日号のことで、プログレ特集だった。ぐぐってみたところ、フールズメイト編集長の北村昌士の書いたものだったらしい。

「廃人」というのがどういうものだか全く分からなかったのだけれど、「あしたのジョー」の矢吹ジョーがホセ・メンドーサとの決戦の後、燃え尽きて廃人になったというのは知っていた。よくわからないけど、たしかパンチ・ドランカーってやつだ。

シド・バレットの場合は、ピンク・フロイドのリーダーとして1stアルバムまで関わったものの、おかしくなって脱退。解雇されたとも言われている。その後、2枚のソロ・アルバムを発表した後で完全に沈黙し、社会復帰しないまま2006年に亡くなった。亡くなった時は、デビッドボウイがピンク・フロイドの曲のカバーを披露したり、それなりにニュースになった。

ケビン・エアーズとコラボしたこの曲は1枚目のソロ、” The Madcap Laughs”(邦題「帽子が笑う…不気味に」)のころに録音されたものらしい。やはりソフトマシーンを脱退していたケビン・エアーズは、シド・バレットと新たなバンドの結成を目論んでいたとも聞くけれどもデマかも。

とにかく、廃人シド・バレットに興味を持った自分(少年)は、ピンク・フロイドの1stとかソロアルバムを聴いてみたものの、まったく理解不能だった。ちなみにケビン・エアーズも別に好きじゃなかった。今頃になってケビン・エアーズのボヘミアンなゆるい感じが心地よかったりする。シド・バレットについては、正直今でもよくわからないのだけれども、YouTubeから繰り返し流していたら、少しずつ気持ちがよくなってきた。この曲なんかはふにゃふにゃしていてなかなかいい感じだ。ポチって見よう。


看護師のシド・バレットの姉は弟にアスペルガー症候群(以下、AS)の兆候があったと述べたことがあるらしい(ソース不明)。ちょっと変わった人だったんだろう。でも、ボブ・ディランマイケル・ジャクソンもASだなんて話もあるんで、まぁ、カルトの信者にとって、カリスマのASの診断書は天才の証明書みたいなものなんだろう。自分が少年時代に廃人という言葉にワクワクしたのと同じようなものだ。たぶん。


さて、ピンクフロイドはその後、プログレバンドとして大成功をおさめ、ロックスターになる。1975年の11枚目のアルバム”Wish You Were Here”「炎 あなたがここにいてほしい」のタイトル曲。ラブソングみたいなタイトルだけれど、ここでいう”You”とはシド・バレットを指しているとも言われている。仮定法で「君がここにいてくれたらなあ」といった具体の意味。