Les Rêveries du promeneur solitaire

リーマスじいさん

Wo, are we movin' too slow?
Have you seen us,
Uncle Remus . . .


え?オレたちの動きがのろすぎるって?
オレたちのこと見たことあんのかよ、
リーマスじいさんよぉ. . .

フランク・ザッパが1974年に発表した曲、”Uncle Remus”の冒頭の歌詞。当時彼のバンドに在籍していた黒人ピアニストのジョージ・デュークとの共作。公民権運動の歌なのだそう。

ネットで簡単に調べてみたところ、Uncle Remusとは、南北戦争終結から十数年度に当たる米国で白人の作家が編纂した黒人の民話集のタイトルで、この民話集は、奴隷出身の召使いである架空キャラ「リーマスじいや」が、主人の息子たちに黒人社会の間で口頭伝承されてきた民話を語り聞かせるという形式になっているらしい。

この中で黒人はウサギ(主人公)、白人はキツネやオオカミなどに喩えてられて登場するのだが、20世紀半ばまでの間に黒人に対して人種差別的だと認識されるようになっていったようだ。今日的な評価はもう少し違っているかも。

リーマスじいやの物語―アメリカ黒人民話集 (講談社文庫)

リーマスじいやの物語―アメリカ黒人民話集 (講談社文庫)

(自分は未読です。)

一方、ザッパとデュークの曲は、1960年代半ばにカリフォルニア州のスラム街で起こった暴動(ワッツ暴動)を題材にしたもので、白人のレイシストと「白人が何人かいる」という理由で店を襲う黒人たちを風刺した曲、なのだそうだ。正直のところ自分にはよくわからないんですが。。すいません。


ジョージ・デュークは昨年ロスで亡くなった。前の年には国連主催のジャズのお祭りで音楽監督を務めたと聞いていて、元気そうだなと思っていたのでちょっとびっくりした。

下の動画は亡くなる3年前のもの。Cosmic Debrisの途中から始まってUncle Remusへ。原曲は縦揺れのロック的なノリなのだが、こちらはゆったりと左右に揺れる感じの黒人的なノリ。


次の動画は、フランク・ザッパの長男がやっている父親のコピーバンドでの演奏。こちらは原曲に忠実なアレンジ。最後の高音域も頑張った。息子のギターソロもかっこよく決まっている。


ジョージ・デュークフランク・ザッパのバンドに参加したのは、仲間のフランス人バイオリニストのジャン・リュック・ポンティに誘われたのがきっかけだそうだ。下の動画はデュークが亡くなる前の年に二人でザッパの名曲”King Kong”を演奏している動画。ポンティのノリはふわふわとやわらかで優雅。ポンティは健在で最近イエスのジョン・アンダーソンと新しいバンドを結成したらしい。

このライブはベルリンの北、バルト海に接する街、バート・ドベラーンで毎年行われるザッパの音楽祭” Zappanale”での演奏。当地は旧東ドイツ領でザッパの胸像がある。その昔、共産主義時代の東欧では、公然とザッパの音楽を聴くなんて、いろんな意味で不可能だったわけでして…いろんな意味で。。ザッパのファンは警察から迫害を受けることもあったとか。まぁわかるわかる。


ちょっと話を広げすぎたので最後に巻き戻そう。今度はジョージ・デュークによる1975年の演奏。ザッパのバンドを離れたころか。

若かりし頃のデュークは、こんなふうにファルセットで歌うことが多かった。ザッパとの仕事の中ではほかにもいろんな奇声を聴くことができる(笑)。


なお、原曲のメイン・ボーカルはザッパが担当している。ザッパの声もなかなか味がある。ピアノはもちろんジョージ・デューク

アポストロフィ(紙ジャケット仕様)

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