Les Rêveries du promeneur solitaire

ポジティビズム!「論より証拠」論 その2

お盆カレー

ボンカレーの「ボン」ってお盆のボン?
オセチもいいけどカレーもね♡
あれはククレか…
お正月がククレなら、お盆はボンカレー、なのか?

ぐぐってみたところ、ボンカレーはお盆とは無関係で仏語の“bon”からとったのだそうだ。ボンジュールのボン。ちなみにククレは”cookless”という造語をさらに縮めたのだそう。意味わかんね。

シトシトピッチャン、シトピッチャン…♪
帰らぬチャンを待っている。
チャンの仕事はシカクぞな...
…じっとガマンの子であった…


かわいそうに…ホントーのカレーを食べたことがないんだな…
3分間待つのだぞ…いや、待ってください。
ホンモノのカレーをご覧にいれますよ!
シカクいニカクが、まあるくおさめまっせ!
(山岡停仁鶴)

ホント、意味わかんね。

魅力的なメカニズム論ストーリーの落とし穴

閑話休題
因果関係のカラクリを解き明かすストーリーは、推理小説で犯人を特定するようで面白い。そのせいか因果関係を考えるときに、わかりやすいストーリーとかもっともらしい理屈にこだわりすぎてうまくいかないこともある。

カラクリの解明にこだわるよりも、観測された事実から因果関係を推測した方がうまくいく場合も多い、というか、カラクリの理屈は理屈としてそれなりに尊重しながらも、理屈が正しいのかどうかは、やっぱり実際に試してみないことには…ということも多い。

コンピュータのプログラムにバグがつきものであるように、特にカラクリやロジックが複雑だったりするような場合、「ボクの考えた究極のメカニズム」が示す予想結果が、実際とずれてしまうことはわりとありがちなのではないか。

例えば、βカロテン。取りませベータカロチン。20年くらい前に喫煙者がサプリメントとして多めに摂ると肺がんを抑制するかもという仮説があり、小規模だったり大雑把だったりの方法ながら仮説をサポートする研究も発表されてブレイクした。

でも、きちんと調べたところ期待したような効果は確認できず、逆に肺がんが増えてしまう可能性を示唆する結果がでてきてしまい、研究は頓挫。肺がんが増えるメカニズム(理由)はわからない。

ヒトは納得するために理由(カラクリ)のストーリーを知りたがることが多いから、それがわからないという状態を受け入れるのは辛いことがあるけれども、わからないことなんて世の中にたくさんあるんだから、ある程度あきらめるしかない。しょうがない。

逆にいうと、βカロテンサプリメントが喫煙者の肺がんを増やす可能性がることが分かったように、カラクリがわからなくても観測された事実をつなぎ合わせて因果関係を推定できることもある。データにはストーリーが描かれていないから面白くない。でも、因果関係をカラクリから明らかにするのは、事実を積み重ねて推測する方法よりも難易度が高いことが多い。少し意外かもしれないけれど。

事実の積み重ねから因果関係が強く示唆されているのに、メカニズムが解明されていないとして判断を留保した結果、遅きに失するような例もある。

たとえば、水俣病は、疫学的な証拠からは早い段階で水俣湾の魚を食べることが原因であることが分かっていたにもかかわらず、病理や原因物質を解明する方向にこだわったためにとても長い時間がかかってしまった、という批判がある。

疫学のヒーロー

疫学は事実を観測して頻度や分布、因果関係を究明する実証的な学問。疫学の歴史を眺めてみると、過去には病理のストーリーや本質的(!)*1な原因物質が分からなくても記録を取って分析し、病気の原因や対処法を発見した人たちがいた。

ジョン・スノウという英国人は19世紀中頃のロンドンでコレラが流行した際に、観測したデータを分析し、汚染された井戸水が原因であることを突き止めた。これはコレラ菌が発見されるより前の時代の話。当時は病原菌というアイデア自体がまだ未確立だった。ジョン・スノウは疫学の創始者とされている。

同じく19世紀中頃、ハンガリー出身の産科医イグナッツ・ゼンメルワイスは、医療スタッフが手を塩素消毒することで病院内の産褥熱の感染を大幅に下げられることを発見した。彼は患者を救うべき自分たち医師が逆に産褥熱の原因だという、なかなか受け入れがたい主張をしたので、医療界から排斥され、悲劇的な末路をたどってしまった。強い信念とか正義感、高いプライドを持って仕事に励んでいる時は、ブレない代わりに頑なになって過ちを認められなかったりすることもあるよね。ゼンメルワイスはその犠牲になったのかもしれない。死後に名誉が回復されて院内感染予防の父などといわれるようになった。

18世紀半ば、英国の海軍軍医、ジェームズ・リンドは野菜や柑橘類を食べることで壊血病を予防できることを発見した。この発見に際して、柑橘類を与える船と与えない船とに分けて結果を比較するという、今でいうところの群間比較試験を考案したことから、EBM(evidence-based medicine)の創始者ともいわれるらしい。これぞ究極の軍艦比較試験(?)。群間比較は、集団を二つにわけて、一方にあるものを与え、他方には与えない。それ以外の条件は全部同じにして同時並行で実験をすすめるやり方。バイアスが入り込む余地が比較的少ない方法だから、現在も臨床試験や治験で一般的な方法だし、心理学など疫学以外の分野でも使われている。壊血病の発症がビタミンCの欠乏と関連することが分かったのは20世紀になってからの話。

19世紀後半、日本の海軍軍医、高木兼寛は、軍内部で流行していた脚気の原因を白米中心の食事にあるとする栄養学説を唱えて海軍食に洋食や麦飯、カレーライスを導入、脚気を大幅に減少させることに成功した。これも船を使った群間比較。一方の船には白米による和食、もう一方には洋食を与えて結果を比較する方法で実証した。英国留学組だったのでジェームズ・リンドの功績を知っていたのだろう。脚気の発症がビタミンBと関連することが分かったのは20世紀になってからの話。当時、脚気は主にドイツ留学組が主張する病原菌説が有力だった。高木も病原菌ではないが別の物質を原因と考えていたのでメカニズム論では的を外したが(ビタミンなんてまだ概念すらなかったし)、実証的な方法が海外でも高く評価され、日本疫学の父といわれている。あと海軍カレー=日本のあの肉じゃがカレーの父(?)

おまけ

ということで、やっとこさカレーの話にもどった。なんとかつながった。
しかしながら、実のところ加齢のせいか、日本風カレーはハっとしてグー?? じゃなくて、グにしてもルーにしても、デンプンと油分がややキツい感じがしてしまう。

個人的にはセブン&アイキーマカレーのレトルトが比較的さっぱりめで気に入っている。つーか、今日も食った。だけど最近セブンイレブンでなかなか見かけなくなった。

本日のBGM

*1:ちなみに「本質」(エッセンス)というのは便利な言葉だけども、もともとは「実存」(エクジスタンス)の対義語としての意味を持っていて、あの世系の魔法の言葉に属していた。実存は物質的な存在で、本質は概念的な存在。実存する肉体は時が経てば朽ちる。しかし魂は本質的な存在で永遠だ、みたいな感じ?