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Eureka!/Positive Reaction!

Rêveries du promeneur solitaire

The Canterbury Tales

去年だか今年だか、とにかく昨シーズンの冬にYouTubeで見つけた動画が今も気に入っている。



叙情派プログレ、キャラヴァンの「ウィンターワイン」という曲。1971年6月、西ドイツの音楽番組”Beat-Club”での演奏とのこと。

特にバスドラの音が気に入っている、というか気になる。ガムをクッチャクッチャ噛んでいるようなベタベタした音。ンタッ、ンタッ、ンタッ、ンタッ。一般的には「よいサウンド」ではないだろう。どちらかというと品がない。けれどもなんだか気になる。

あとそれから3分40秒辺りからのオルガンソロの導入部、16ビートのハイハットがいったんフェイドアウトした後、8ビートになって再びフェードインしてくる。チッチッチッチと時計の針のように細かく刻む音。その上にオルガンがやはりフェードインして静かに乗っかってくる。この辺りの展開も現在の個人的なツボである。

この曲はこのバンドの代表的なアルバム、”In The Land of Grey and Pink”(グレイとピンクの地)に収められている(A面2曲目)。アルバムのバスドラはこんな妙な音はしない。展開のニュアンスもちょっと違う。

ドラマーはリチャード・コフランという人。派手ではない。そんなに有名人というわけでもない。キャラヴァン自体、それほど売れたバンドではなかった。けれども、ソフトマシーンと並んでいわゆる「カンタベリー系」の主要なバンドとされている。

カンタベリー系」は「カンタベリーミュージック」とか「カンタベリーロック」とも言われる。ウィキペディア英語版)には”Canterbury scene”とか”Canterbury sound”とある。音楽は基本プログレで当初はサイケ、次第にジャズに接近した。けれどもカンタベリー系は音楽の特徴というよりは人脈集団の色彩の方が強い。

イングランド南東部ケント州の都市カンタベリーで、ロバート・ワイアットのおばさんが運営する下宿屋にタムロしていた若者たちがバンド(ワイルドフラワーズ)を作って、やがてそこからソフトマシーンが分離独立してそれなりに売れた。残ったメンバーがこのキャラヴァンになった。

このバンドのベース&ボーカルのリチャード・シンクレアロバート・ワイアットの学校の後輩で、キーボードのデイヴ・シンクレアはリチャードの従弟。デイヴは後にロバート・ワイアットがソフトマシーンを離脱した後に作ったバンド(マッチングモール)に参加した。

その他にもこの人脈集団の中で多くのバンドが出来ては消えた。創業当初のヴァージン・レコードもカンタベリー系のバンドを多く抱えていたので、そのせいでプログレブーム終焉とともに経営が傾き、アナーキー・イン・ザ・UKで起死回生、なんて話も聞いたことがある。

プログレ演奏家もポップ化路線で生き残りを図った人が多くいた。ジェネシスやエイジアのようにビジネス面で大成功した人もいた一方で廃業した人も多かったようだ。

リチャード・コフランの場合、パブの店主になった。90年代半ばにキャラヴァンが再結成された後もパブ経営の方が主業だったようだ。2年前の12月に66歳で他界したらしい。

同じカンタベリー系のケヴィン・エアーズもこの年の2月に亡くなった。68歳だった。今年3月にはデヴィッド・アレンが亡くなった。77歳。オーストラリアからカンタベリーに放浪してきたヒッピー。先輩格で不良どもの憧れだった。


グレイとピンクの地+5

グレイとピンクの地+5

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