Les Rêveries du promeneur solitaire

ビデオスターの悲劇(エピタフのおまけのおまけ)

ビデオ(テレビ)がラジオスターを殺した。
今はSNSがビデオスターを殺す時代 (((( ;゚д゚))))アワワワワ……

そうだったのか!相次ぐロックスターの死はSNSのせいだったのか!(な、なんてだってー?!)

まじめな話、往年のロックスターが多く亡くなるのは、基本的にはロックスターが老いたから。その昔、テレビの普及に伴って有名人が爆発的に増えたのだそうだ。その増えた有名人が年を取って亡くなりやすくなった *1 。そしてスターの死の情報はSNSなどを通じてあっちゅう間に世界の隅々まで流通する。

ロックとテレビというと80年代のMTVやプロモーションビデオが代表的な印象があるけれど、それよりももっとずっと以前からテレビとロックの関係は深いように思う。テレビの普及とロックの市場拡大の時期はシンクロしている。直接的な関係があるかどうか自分には分からないけれど、少なくとも間接的には多少なりともお互い影響し合っているのではないだろうか。たぶん。*2

意図的にテレビに出ないロックスターもいたけれど、それもまた「テレビを拒絶するスター」というブランドというか、なんというか、「マーケティング」として機能した。ロックはテレビ世代の大衆音楽といえるのではないだろうか。

ロックの持つ「不良のイメージ」に反し、ロックの市場拡大は基本的に中流白人家庭の若者が牽引した。60年代になってボブ・ディランが俳句界における松尾芭蕉のように(?)、語呂合わせ中心だった歌詞を面倒臭くしたころから、中流家庭出身の大学生が単価の高いLPレコードを買いまくるようになった。ビートルズは多額の広告費を使ったメディア戦略で世界を制し、ロックは世代的にも階層的にも地域的にもより広い範囲に浸透していった。

今年、トランプさんを支持した中心は没落した中高年の白人男性なんて話もあるから、その人たちがロック世代で実は元ボブ・ディランのファンですとかだったら、なんともあれだなあと思うわけです。生活もかかってるからねえ、お互いに。そんな米国大統領選挙も今やツイッターフェイスブックが影響力を持つようになったらしい。

「SNSでアラブの春」なんつって浮かれているスキに、一気に混迷の時代が来たような気もする。SNSって群集心理を先鋭化させるのだろう。

中世ヨーロッパの宗教革命の背景には活版印刷の発明あったらしい。活版印刷で情報の蓄積や伝達のコストがぐっと下がったそうで、そしてその後、長い宗教戦争の混乱の中でたくさんの人が殺されたそうだ。

SNSが殺すのはいったい誰なんだろう?(年の瀬に物騒なこと言ってすみません。)
Confusion will be my epitaph.(グレッグ・レイクも死んじゃったねえ。)

本日のBGM



来年プログレバンドのイエスがロックの殿堂入りするそう。

「ラジオスターの悲劇」をヒットさせたバグルズのボーカルのトレバー・ホーンとキーボードのジェフ・ダウンズは1980年にイエスに加入した。けれどもその時のイエスはすでにシニタイで、アルバム1枚残して解散。上の動画はその時の鳴かず飛ばずのビデオ。イメチェン狙ってポップでストレートな曲ながら、心なしかなんとなく無理して明るく元気に振る舞っているようにも見えてしまう。

イエス解散後、ジェフ・ダウンズはギタリストのスティーブ・ハウに連れられてエイジアに参加。トレバー・ホーンはプロデューサーに転向して成功し、1983年のイエス再結成の際にはプロデューサーとして「ロンリーハート」をヒットさせた。

なお、来年殿堂入りするメンバーは、70年代前半のプログレ時代全盛期の時とロンリーハートの時にバンドのメンバーだった人のようで、このバグルズ組の2人は残念ながら選外となった模様。ビデオスターの悲劇。あわあわ。

*1:ロックスターは27才で死にやすいという俗説があるが実際はそうでもないらしい。

*2:ちなみに掃除機とか洗濯機の普及率ともシンクロしているかもだけれど、まあ、たぶんあまり関係ない。もしかして日本人の平均寿命とか平均身長の急激な伸びともシンクロしているかもしれない。「日本人はロックと聴くと健康になって長生きするんです」とか「ぐいぐい背が伸びちゃいます」とかだったら、それはそれですごく「クリエイティブ」で楽しいけれど、おそらくこれもないだろう。間接的に関係があるとすれば一般大衆の暮らしが豊かになったということが共通の背景にあるんじゃないだろうか。