Les Rêveries du promeneur solitaire

Poupée de cire, poupée de son / 夢見るクラウト人形

おまえもロウ人形にしたロウかっ!

ロウ(紙ジャケット仕様)

ロウ(紙ジャケット仕様)


関係ないとは思うけれどもドイツのミュンヘンにオリンピック・タワーという塔があって、その中の一角にロック博物館があるらしい。かつて東京タワーには蝋人形館があった。この蝋人形館は、趣味的に偏った人選や展示物があるということが、一部の趣味的に偏った人たちの間だけでは有名(?)だった。

偏った趣味的というのは、フランク・ザッパ、ロバート・プリップがいる・・・ならまだしも、ジャーマン・プログレ系の人たちの展示が特異的なのだった。最近は「ジャーマン・プログレ」という言葉はあまり使われないのかもしれない。「クラウト・ロック」などという。60年代末から70年代に西ドイツで隆盛したロックのジャンル。「クラウト」は例のドイツの酸っぱいキャベツの漬物、ザワークラウトを指す。

その蝋人形館が2年くらいまえに閉鎖され、個人的に蝋人形さんたちの行方が気になっていたところだったのだが、その一部が六本木のロック博物館(Tokyo Rock Showcase)で展示されているという話を聞きつけて早速行ってみた。

六本木から乃木坂方面に歩き、ミッドタウンの西側の交差点の近く。地上7階建て、低層階は店舗、高層階はオフィス、築5年くらいの新しいビル。Tokyo Rock Showcaseは、そのビルの4階部分で、広さは50~60坪くらい。そんなに大きな規模ではない。Tokyo Rock Showcaseの中、というかスペースの大半はTokyo Max Museumである。ワックスとか言われてもちょっとピンとこないよねえ、蝋人形は英語でWax figureなんだって。おフランスではPoupée de cire(by フランスギャル)。入場料は1,000円。

運営会社は東京タワーの蝋人形館と同じ(株)藤田商店。創業者の藤田田氏は日本マクドナルド日本トイザらスを創業した名物実業家というのは説明不要でしょうか。東京タワー蝋人形館の館長は長男の藤田元氏で、人形の人選や展示物は元さんの趣味を反映したものらしいと聞く。というか館長の個人的なコレクションを展示しているような印象すら受ける。


クラウト・ロックの特徴、というか、残念ながら自分はそれほど詳しいわけではなのだが、ステレオタイピーなイメージとしては、ミニマル、電子音楽、サイケ、トランス、トリップ、そんな感じ。

ミニマル・ミュージックは、短いフレーズをひたすら繰り返し反復する音楽。60年代頃から現代音楽の中で流行ってきたもの。このころは音楽以外のゲージツ分野でもミニマリズムの動きがさかんだった、らしい。残念ながら自分はゲージツやらアートやらは、さっぱり分からない。スイマセン。

ミニマル・ミュージックは、目下世間を大いに騒がせているドローンとも関連がある(?)。ドローン・ミュージックは一定の音(一般的には低い音)をずぅーっと流し続ける音楽のこと。もともとはDrone(蜂)のぶーんという羽音を指したもの。暑くて寝苦しい夜の蚊の羽音ってほんとにウザイよね、最近聴いてないけど。ミニマルやドローンを使うと神秘的だったり、瞑想的だったり、あるいは宇宙っぽい広がりのある感じの怪しげな音が作れる。

たとえば、ほんの一例だけれども、巨大な滝で大量の水が、ゴーっと大きな音を立てて、ひたすら単調に流れ落ち続けるのをじぃーっと眺めつづけている、そんな場面をイメージしていただくとわかりやすいかも。

または、場所を変えて、小川のせせらぎに耳を澄ましてじぃーっと音を聞いてみる。

ゆく川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。

絶え間なく流れる水の音。泡ができては消え、できては消え、繰り返し、繰り返し・・・



これで君もデイ・トリッパーになれる!





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ちなみにボク、トリッピー。

ミニマル・フレーズをひたすら反復したり、ひたすら同じような音を流し続ける演奏は当時の新兵器、電子楽器での機械演奏に向いていた。ほかにも磁気テープを使ったり、エレキギターエフェクター(ディレイ)を使ったり技術的にはいろいろとあるようだ。技術的なことなんて自分にはさっぱりであるけれども。スミマセン。

70年代の西ドイツのロックは、英米のサイケやガレージ・ロック、それからプログレのムーブメントの影響を受けながら、ガラパゴス風の進化を遂げたらしい。次第に話題を呼び、70年代後半にはデビッド・ボウイがベルリンに移り住んで、ブライアン・イーノを客演としてアルバムを3枚発表した。

日本で影響を受けた人、きりがないけれど、たとえば喜多郎、ツトム・ヤマシタ、YMOといったあたりでしょうか(?)。アンビエント、ニューエイジ、それから4つ打ちのダンス・ミュージックなどにも影響が感じられる。バブルのころにマハラジャでワンレン・ボディコンのおねいさんが芭蕉扇みたいなウチワふってお祭り騒ぎしていた音楽にも!自分は残念ながらご縁がありませんでしたが。。スミマセン。

そーゆーすごくアリガタイ音楽なんだぞという能書きはこのくらいにして、どんな音楽なんだというと、こんな感じ。

クラウト・ロックがその後、進化と混血を繰り返した結果のひとつではあるでしょう。また繰り返す~♪ ポリビニル、ポリバケツ、ポリブクロ・・・(2007年)


これはロバート・プリップ御大とブライアン・イーノの共作の第一弾(1973年)。ドローンとミニマル。正直、商品としていかがなものか。


デビットボウイのベルリン三部作のうち、ヒーローズにはロバート・フリップが客演、ロジャーにはエイドリアン・ブリューがバックバンドのメンバーとして参加しており、後で二人はキングクリムゾンという古い看板を掲げることになります。特徴はツインギターポリリズム、ミニマル。また繰り返す~♪(1981年)


先日お亡くなりになったデビッド・アレンに敬意を表して、彼のバンド、GONGから。サイケでミニマルな電子音楽。この中では一番クラウトロックに近い。(1975年)


個人的に最近わりと気に入っている。ジョン・ホプキンスというアメリカの大学みたいな名前の英国人。(2010年)


個人的にこの勇ましい曲は走っている時に聴くといい感じ。
デトロイトといえばロックバンドのKISS。それから自動車産業反日感情、犯罪都市、財政破綻・・・それからテクノ。この曲(1987年)の作者デリック・メイはテクノの創始者のひとりなのだそうで、クラフトワークとかYMOとか聴いたのがきっかけとか。
ちなみに同じくデトロイト・テクノホアン・アトキンスは、上で紹介したGONGのギタリスト、スティーブ・ヒレッジの曲を使ってて、それを聴いたヒレッジはテクノに転向してそれなりにうまくいった。時代がヒレッジに追いついた感じもする。


ちなみにザッパはミニマルをやらない。嫌っていたとされている。ザッパは潮流には乗らないということか。電子音楽はやっているんで、代表曲をついでに紹介。(1986年)


というわけで、四の五の書いたけど、この中に本物のクラウト・ロックは一曲もないので自分で探して聴いてみてね。by トリッピー

反復 (1956年) (岩波文庫)

反復 (1956年) (岩波文庫)